白衣越しの体温



「慧、今日…本当、お前大丈夫か?なんかあったんなら、言ってくれよ。」

「悪いな孝明、心配かけて。…ちょっと、疲れただけだ。あぁ~ねみぃ。」

「ははっ、そうか。でも、本当にだめだったら、話せよ?」

「…あぁ。ありがとう。」


車庫に車を入れて、俺たちはエレベーターへと向かった。

途中、明らかに様子のおかしな慧に俺はこんな言葉しか、かけられなかった。

九鬼島は黙ってあとをついてくる。

慧がなにか大きなことで悩んでいることは薄々感づいていた。

きっと、九鬼島だって。

だって、こいつは、熊が現れたって、ゴジラが現れたって、平然と横を通り過ぎていくような男だから。

でも、今はあんまり干渉するべきではない。

かといって、ほおって置くととんでもない所までいってしまうから。

俺は慧から目を離してはいけないと思った。
< 123 / 141 >

この作品をシェア

pagetop