いなくなる
「暗示だよ!」


「暗示・・・?」


「テレビなんかでよくやっている催眠術なんかでよくあるだろう?体を動かせなくなったり見えないものが見えたりするあれだよ」


雅樹は幹男に視線を向け問いかける?


「幹男は、稔が3時間目に眠っていた事は覚えているだろ?」


「あぁ、もちろん覚えているよ?」


「それじゃ、3時間目が終わった時点で、稔はその席に座っていたかい?」


稔の席を指差す雅樹。


「えっ?そりゃ座っていただろ?」


「どういうふうに座っていた?その時、稔はまだ眠っていたか?」


そう雅樹に問いかけられると、はっきりした答えが出せなくなってしまう幹男。


3時間目の途中で稔が眠っていた事には、はっきりと答えられるのに、なぜか3時間目の終わりに、稔がどのような状況だったか答えられないのである?


雅樹は、隆志の方に視線を向けて幹男にした同じ質問をした。


「隆志は?・・・覚えている・・・?」


雅樹の質問に考え込んだ隆志であったが、やはりその答えは幹男と同じなのである。


「・・・俺も・・・覚えていない・・・?」


隆志は自分の隣に座っていた稔が、どうしていたか記憶の断片を組み立てていく。


「・・・あの時は、たしか?、そうだ!雅樹が急に教室を飛び出して、その後を追いかけたはず」



隆志の言葉を待ちかねたように、雅樹は問いかけた?




「俺を追いかけようと自分の席を立った時、隆志は右と左どちら側から俺を追いかけた?」
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