風にのせて君へ


「どうりで馬鹿に耳がいいわけか」



それを言われるのが嫌だったんですよ。

センパイ。



「耳いいの?」



そう雪先輩に訊ねられて私は、首を横に振る。



「人並みですよ」


「まあ、そうだよねー。

名前がそうだからって、みんながみんなそんなわけじゃないよね」



実は違うんですよ。


耳はめちゃくちゃいいんですよ。



そんなことお構い無しに雪先輩は続ける。



「奏(カナデ)みたいにねー」



え。


雪先輩、“奏”って誰ですか?



「そうそう、コイツコイツ」



そう言って指をさす。



「指差すな」



指されたのは、センパイ。


お……お……



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