【探偵ピート・ジャンセン】
彼女の過去と新たな影



ターニャはこれ迄
人間の女性として生きて
来ただろう‥

糧とするものが変わっただけで
彼女の根底にあるものは
何ら変わらない。

この百年の歳月をどんな
孤独の中で過ごして来た
のだろう‥

彼女は一つの土地に
止まる事を許されない。

自分以外の周りの人間は
徐々に年月と共に老いてゆく‥

彼女は老いる事を許されない。

自分が自分で無くなった
時間のまま永遠と言う
時の中に生かされているのだ。


サラ・ポートマン


彼女は、そんなターニャの
孤独に一瞬の輝きを
もたらした。

友情

そして一瞬の恋をターニャに
教えた。

三角関係、抜け駆け‥

普通の女性が時として
経験する事‥

彼女はターニャに束の間の
人間としての生きる喜びを
教えたのだ。

私は‥
私は一体、彼女に何をして
やれるだろう?

彼女の親友だった女性を葬る‥

深い悲しみと孤独を再び
彼女に与えるだけなのか‥


『ターニャ・・・』


振り向いた彼女は何事も
無かったかの様に私に向かって
微笑みかけた。


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