【探偵ピート・ジャンセン】


焼失する前の僅かな時間、
その姿は、人間ならば60代位の
年齢の男に見えた。

かなり長い年月を
生き長らえて来たヴァンパイア
だったのだろう‥。

恐らく、この都市の何処かに
サラ達とは別のヴァンパイアの
棲み家があるに違いない。

この先、私はとんでもない
ものを敵に回す事になりそうな
気がした。

何故なら、あのヴァンパイアは
自ら進んで日光に焼かれた
訳ではない。

何者かに由って袋詰めにされ、
此処に運ばれて来たのだ。

私は、ふと残された麻の袋を
見た。

そこには主にフランスで
高い評価を得ているハイチ産の
珈琲豆の品種名が印字
されていた。

この辺りでこの豆を扱う業者は
限られているだろう‥。

辿ってみれば棲み家を
突き止める事が出来る
かもしれない‥。

『ターニャ・・・』

彼女は私が何も言わずとも
頷き、同様の事を思ったの
だろう。車まで一緒に
引き返すと、地図で珈琲豆を
扱う業者の所在地を辿り
始めた。




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