ホスト前線上昇中
コンコン。


自分の部屋の前なのに念のためノックをしてしまう。
アイツに気を遣うのも釈に触るのだが、一応相手が『異性』と言う認識がそうさせていた。

「開いてるよ」

中から声が聞こえる。どうやら彼の方が先に帰っていたらしい。


──ガチャ。


少々、乱雑に扉を開けるとカバンを自分の机にドカッと置いてやった。

「部屋は移動できたのか?」
彼は私と背中合わせの勉強机に座っている。
その余裕そうな態度がむかつくんですけど。

「……できなかった」

「それは、それはお気の毒に」

「よくそんなに悠長に構えてられるわね。嫌じゃないの?」

「別に……どうあがいても移動できないんだから諦めるしかねぇだろ」

このままでは私もこいつのペースに乗せられてしまう。

「私はぜぇ~ったい!諦めないから!」

「へぇ~なんか作戦でもあるの?」

「な……無いけど。このままじゃあんたの……」

何?
どうしたって言うのよ!

その透き通った彼の瞳に吸い込まれそうになっている自分が居た。

「お前はもう俺のもんなんだよ」

「はぁ?ばかじゃないの!私があんたのこと好きなるなんて思ったら大間違い!自惚れないでよね!」
……ったく、どっからそういう発想が生まれるんだか。これもプレイボーイならではなのかしら。

「そんなこと言っていいのかな?」

静かに笑みを浮かべると、彼は机の引き出しから写真を数枚取り出した。

──私の着替え写真!?

下着姿の自分が隠し撮りされていた。
おのれ~っ!姑息な手を使いおってからに!
つーか、そんなもんいつの間に撮ったんだ。

「卑怯よ!」

「渉が俺と付き合ってくれれば済む話。どうする?」
< 11 / 33 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop