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 「よっ!おはよ!」
もうすぐ朝のホームルームが始まろうとしている時間。教室に戻る途中の廊下で今一番会いたくないヤツに出会ってしまったのだ。

「……」
とりあえず無視しよう。

「おい、渉~っ!渉ってば~!」
もう!!しつこい!

「私に付き纏わないで!」

「なんだ、アイツ」

美由紀は彼女の冷たい態度に少し苛立ちを覚えながらも、自分のせいであることも心のどこかで感じていた。





「美由紀、どうしたんだ?さっきからぼ~ぉとしちゃってよ」

「別に」

声をかけてきたのは中学から親友でG組のクラスメイトの本城学(ほんじょうまなぶ)だった。
これも一種の腐れ縁とも言うべきか……席も近かったりする。

「ちょっと小耳に挟んだんだが、お前のルームメイト『女』なんだって?」

「いつもの通り名前を女と間違えられたんだよ、全く迷惑な話だ」
ここまでくると流石に名付けた両親を恨みたくなる。

「かわいいのか?その子」

「さぁな」

「まぁ、中学からモテまくってきたお前には、もはや女に対する免疫なんて無いだろうけど」

と言っている学もそれなりにはモテるわけだから、人のことをとやかく言える立場ではない。確か今年のバレンタインデーのチョコの数は美由紀に一つ差で勝ったという実績の持ち主でもある。

「お前もアイツと同じことを言いやがって」
渉に言われた昨日の言葉が頭の中をかすめる。

「?」

「そこまで言うなら賭けてみるか?」


──キンコーン、カンコーン……。


予鈴は容赦なく一時間目の始まりを告げるのだった。
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