トリプレ
 合唱コンクールの間は、由衣ちゃんは保護者の席で見ていてくれた。由衣ちゃんの期待に応えられず、結果はビリ。なんとも情けない。いいとこみせたかったな。
「ビリだって。下手だったっしょ?」
 そう聞くと由衣ちゃんは、
「すっごい上手だったよ。」
 って笑っていた。由衣ちゃんは私と会ってからはずっと笑っている。本当に楽しんでくれているんだろうか。無理してないだろうか。笑えば笑うほど心配になってしまう。
 廊下を歩いていると、うちの両親に出くわした。やばい、紘貴と一緒だとお父さんに怒られるかも…。
「あっ瑞穂。ようやく会えたわ。相良君も一緒かい。」
「うちの娘がいつも世話になってるそうだな。」
 お父さん、脅さないで。
「こんにちは。」
 紘貴は頭を下げる。
「もしかして妹さん?」
 お母さんは由衣ちゃんにニッコリと微笑みかけた。
「はい。由衣です。」
 紘貴はやっぱりお兄ちゃんなんだな。由衣ちゃんに頭を下げるように促していた。
「目元がよく似てるわ。そう言われない?」
「はい。言われます。」
「由衣ちゃん、体の方は大丈夫なの?あんまり無理しちゃダメよ。」
 お母さんは由衣ちゃんの頭を撫でた。
「かわいい妹だな。」
 お父さんは紘貴に向かって言った。今日もお父さんは優しい。
「じゃあ、お母さん達は帰るから瑞穂もあんまり遅くならないうちに帰ってきなさいよ。」
 両親は並んで帰っていった。
「優しいお母さんだね。ちょっとビックリしちゃった。」
 由衣ちゃんは私を見上げて言った。
「どうして?怖いお母さんだと思った?」
「そうじゃないの。そうじゃなくて…とにかくビックリしたの。」
 何にビックリしたんだろう?
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