ギブス
柚葉は、右胸の鎖骨の少し上辺りに指先を這わせた…


『……っ』
【…胸元に着いた…

微かな…傷跡のよぅなモノ…っ】



「…柚葉〜…っ!」


…と、階下からの声が聞こえ…、我に返った…

兄の裕隆-ユタカ-の声だった…


『…はいっ!』


慌てて…、ベッドの上に置いたままになっている鞄を拾い…、部屋を飛び出した…

慌てて…、階段を駆け下りる…

階段を降りて、すぐ左手のドアに…ダイニング・ルームがあり…、柚葉は、そのドアを開けた…


『…おはよぅ…、お兄ちゃん…っ!』


「…って、“おはよぅ”…じゃねぇっ!
とっとと…飯、食え…っ!
こっちまで、遅刻する…っ!」


…と、カップにコーヒーを注ぎながら言った裕隆…


柚葉は、仕方なく…テーブルの椅子に腰を掛けた…


「っあ、お母さん…、まだ仕事か…っ」
【お母さんは…、

老人ホームで、介護士をしていて…

今日は、夜勤でまだ帰って来ていなぃ…


1番、身近にいる…憧れの人だ…っ】


…と、柚葉は、辺りを見渡しながら裕隆に聞いた…
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