雷鳴の夜
うまく逃げられてしまったので、それ以上は訊けない雰囲気になってしまう。

だけどここから先、この地下病棟から出るまで、彼とは行動を共にする事になりそうだ。

もう一つだけ聞いておきたい事がある。

「あと一つだけ、いいですか?」

これ以上詮索したら怒鳴られないだろうか。

少し脅えながら、私は彼に話しかけた。

「貴方のお名前…伺っていいですか?名前がわからないと不便ですから」

「……」

しばらく無言のままで私を見る男。

しかし、私の言い分ももっともだと感じたのかどうかは知らないが。

「名前ね…そうだな、俺は…」

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