雷鳴の夜
大男は予想通り、巨体の分だけ動きは鈍重だった。

私達が走るだけで、もう追跡はできないらしい。

私達は廊下を走って距離を稼ぎ、手近な部屋の中へ。

物陰に身を潜め、大男の追跡をやり過ごす。

…部屋の中に入ってきた大男は、室内でキョロキョロと探すような仕草を見せる。

彼の体格には少々狭すぎる部屋の中を、まるで檻の中の獣のようにうろつき。

「っっっっ!」

時折、見失った事に苛立ちを感じるのか、室内の机や椅子を拳で殴り飛ばした。

その威力に、身を竦ませる。

たった一撃で、スチール製の事務机がひしゃげ、宙を舞い、大きな音を立てて床に落ちた。

人間の力では真似できない芸当。

そして…。

私はそばに一緒に身を潜めているヴィクターの顔を見た。

彼も、さっき大男に殴られた筈。

あんな力で殴られたのに、傷一つ負っていないなんて…!

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