ばうんてぃ☆はうんど・vol.1〜地中海より愛を込めて《改訂版》
早速(さっそく)上陸(じょうりく)準備(じゅんび)を始める。と言っても、(じゅう)のマガジンを確認(かくにん)して、財布(さいふ)と、衛星回線に(つな)がるスマホと一緒(いっしょ)に持ってくだけだ。この商売やるのに、丸腰(まるごし)はあり得ない。
俺は愛銃(あいじゅう)のシグ・ザウエルP226を2丁。スライドステンレスが気に入っている。ディルクのやつはグロック19を1丁。
「よし行くか」
「ああ」
「トゥース!」
よくわからんかけ声を上げて、あかりが会話に参加してきた。
「お前は留守番(るすばん)だぞ」
「ええー?! またー?!」
顔文字みたいな不満顔(ふまんがお)で、全力で遺憾(いかん)()表明(ひょうめい)してきやがった。
「この前も留守番だったぢゃーん! もぉ船の上()きたしー!」
「誰かが残ってないと船(ぬす)まれるだろ」
腰に手を当て、ため息()じりに言ってやる。
「それならディルクでも良いぢゃーん! それにこんな船、盗みたい感ゼロぢゃね?」
「こんな船とか言うな! お前こそ不快感(ふかいかん)マックスだ!」
反論(はんろん)だけしといて、後ろを向いて上陸を始める。背中からぎゃーぎゃー聞こえてくるが、ガキのたわごとはとりあえず無視(むし)だ。
港に下ろしたバイクにまたがりながら、ディルクが聞いてくる。
「まずはどこへ向かう?」
「そうだな。とりあえず……マルケスがカードを切ったホテルだな」
「よし」
俺達はバイクを走らせる。背中からガキの罵詈雑言(ばりぞうごん)が聞こえてきたような気がしたが、エンジン音にかき消された。
 
BHをやるなら、陸上での移動手段(いどうしゅだん)も欲しい。俺達はバイクを選んだ。BHの間じゃオーソドックスな選択(せんたく)だ。
本音を言うと車が良かったのだが、さすがにバラクーダの大きさじゃ車は()めない。中にはアホみたいにでかい船を持っていて、車どころか小型のヘリまで持ってるやつもいるが、それだけの金があるなら何のためにBHをやっているのか疑問(ぎもん)に思う。
俺の愛車はホンダのCBR1000RR。しかも我が先祖(せんぞ)祖国(そこく)、フランスの国旗(こっき)と同じトリコロールカラーだ。
前にも言ったが、メカは日本製が最高だ。それに車やバイクと言えばホンダだ。俺的にそれ以外はあり得ない。ディルクにもホンダを(すす)めたのだが、こいつはイエローのBMW F800GSを選んだ。まあ確かに、ドイツも良いバイクを作るが……
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