世界中の誰よりも

あたしに覆い被さろうとしてくる黒い影。


家まであと少しだったのに、どうしよう。


あたしは持っていたスクールバックを思い切り振り上げ、影にぶつけた。

ぐっ、という小さい呻き声。


「このクソガキ……」


暗闇にうっすらと浮かぶ、苛立った表情の陰気そうなオヤジ。

ぞわりと背筋が寒くなる。

苛立ったオヤジが乱暴にあたしの肩に手をかける。


ゾワッと寒気が全身を走る。それとともに起こる、苛立ち。

男はいつだって、女をこうして捩じ伏せるんだ。自分の欲のために。


もう、終わりだ。


思い切り目をつむった、その時だった。


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