世界中の誰よりも

母はあたしに紅茶を入れてくれた後、すぐにテーブルを離れた。

そしてせかせかと夕食の準備を始める。

お鍋を火にかけながら、野菜を刻む。
お鍋の様子を窺いながら、フライパンに溶き卵を注ぐ。

全ての手順が頭に入ってるんだな。

小さい頃はこうやって料理をする母の隣で、その日一日の出来事を話したりしていた。


マフィンを食べ終え、料理する母の姿をぼんやりと眺めていたら、母がチラリと振り返る。


「制服、着替えてきなさい」


あたしは頷き、テーブルから立ち上がる。

キッチンを出る時母を見ると、とても穏やかな顔をしていた。
< 194 / 264 >

この作品をシェア

pagetop