世界中の誰よりも

玄関を上がろうとする父に追いつき、靴を脱いでいると。


「……幸も男と付き合う歳になったんだな」


ぽそりと呟いた父の横顔を見ると、なんとなくショボンとしている。


いや、祐司とは付き合ってないんだけど。


今はそんな事より、思いがけずしょんぼりとした父に思わず吹き出しそうになる。


「何、お父さん。寂しいの?」


笑いをこらえてそう言うと、父はわずかに顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。


「うるさい。……男親なんて空しいもんだな」


ハァーっとため息に混ぜてそう言うものだから、あたしはついに笑ってしまった。
< 227 / 264 >

この作品をシェア

pagetop