世界中の誰よりも

フラフラとしながらも家に到着し、あたしは何も考えずに玄関の扉を開けた。

瞬間、目に飛び込んできたのは、仁王立ちする父だ。


「何時だと思ってるんだ」


押し潰されてしまいそうな、重たい空気を放ちながら父は言う。

慌ててケータイのディスプレイを開くと、9時40分。

しまった。


「ごめん、気づかなかった」


そう言ってその場から逃げてしまおうと、父の横を抜ける。

すると勢いよく腕をつかまれ、あたしは思わず小さく声を上げた。
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