世界中の誰よりも

あたしは耐え切れなくて、渾身の力で突き飛ばした。

突然のことに信也先輩は一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにあたしを睨みつけた。


「ふざけんな! 何すんだよ!」


あたしの中の優しい先輩の姿は音をたてて崩れ、ショックと嫌悪感で涙が流れる。

あたしは鞄を掴むと、逃げるように部屋を飛び出した。


頭の中がぐちゃぐちゃしていて、吐き気がしそう。

信也先輩があんなに強引な人だとは思わなかった。

それともあたしが子供過ぎたのがいけないのか。


信也先輩が追いかけて来ないことが、どうしようもなく悲しかった。
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