蒼天ノ剣〜空守と蒼姫〜
冷たい。その感覚が次第に意識を覚醒させ、氷悠が瞳を開ければ黒巴が覗き込んでいた。


『お、やっと目覚めたか。韋駄天なら宝石に姿を変えポシェットの中だ』

「黒巴……深行は?」

『水神の方はまだ眠ってる。巫女様に見てもらうのがいいんじゃないか?』

「そうだな。黒巴、戻っていいぞ」

『わかった、なんかあったらすぐ呼べよ』


黒巴が戻ると辺りは静まり返り、氷悠が上を見上げる。相当高いところから降りて来たという事をあらためて実感する高さである。


翡翠の浅瀬に浸かったままでいると、翡翠の木々の間から空がひよっこり顔を出す。


「あ、氷悠目が覚めたんですねっ」


嬉しそうに駆け寄って来る少女に嫌な予感を覚える。


「ちょっと待て……うっ」


氷悠が止めるが先に空に飛びつかれそのまま倒れ込む、大きな音を立てて。


「…………空」

「はい、なんでしょうか?」

「飛びつくの禁止」

「照れるからですか?」

「違う」



氷悠がふと空の来た方を見れば、誰かがこっちへ来るのを感じ警戒する。



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