臆病なサイモン
「…今日さ、」
ズルリ、とだらしなく伸ばしていた腕から更に力が抜けてアスファルトを叩いた、瞬間。
ずっと黙っていたダンゴがやっと口を開く。
だからって、…声が出たところで顔は上げられねーよ。
「パピコ、買って帰ろう」
なにそれ。
やだこの人。
俺なんかに気ぃ遣ってやがるよ。
…そんなんしなくていい、のに。
むしろ怒鳴ってくれたほうが楽…あ、ごめんウソ、あのイカす方言で怒鳴られたら多分、立ち直れない。
「…俺がおごるす、先輩」
あぁ、だからってこんなチャンス見逃すわけにはいかねーじゃん。
…そうだろ、ブラザー。
折角、ダンゴがくれた糸口なのに。
無駄にしちゃったら、正真正銘ダメサイモン、確定。
そう言ったら、ダンゴの口から小さく空気が漏れた。
溜め息のような笑いの吹き出しのような、ちょいパニクってた俺には判断不可。
でも。
「…頼むぞ、後輩。マンゴー味、出たらしいよ」
クールな表情のままそんなスイーツ新情報。
あ、最近ね、スイーツ男子とか流行ってるみたいだからね。
さすがいつでも彼女はタイムリー…て、ダンゴは女の子だった。