臆病なサイモン







「…あ、オリオン座」


晴れやかな気分にのっかって、つい、そう呟いた。

俺、いちお理科クラブだから。
今の今まで忘れてたけど…テヘッ!

…て、脳内でネタ披露したところで、ダンゴがすげぇ静かだってことに気付く。


あれ?

不思議に思って真横のダンゴを見たら、別におかしな点はない。

頭から被ったまんまの白いシーツの隙間から、黙って夜空を眺めている。



ただそれだけなのに―――。




『こんな空しか見たことないの、ヒヨコくん』

その時、懐かしい記憶がぶわーっと蘇った。

それはダンゴと出会ったばっかの、俺がなんだかもにょもにょしてる時、言われたセリフ。



…あ、やば。


ダンゴは、この空をよく思っていなかった。



「眩しい」、って。

街の光が眩しくて、星が見えないって、言ってたんだった。


(…やっべー、機嫌、損ねたかも)

たらり。暑さからじゃない汗が、流れた。

折角、お互いイイ気分だったってのに、失言。

こんなつまんないことでビビっちゃうなんて、やっぱり臆病だわ、サイモンくーん。

てふざけてる場合じゃねえよな!許してブラザー!








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