臆病なサイモン










「私にはそれで充分だった。大好きな父さんと母さんが笑っててくれるなら、幸せだった」

そう言うダンゴは、本気の眼をしてる。

でも、そのダンゴ自身が口にする「過去形」が、すげぇ悲しい。



「「イジメ」自体は本当に気にしてなかったし、心配も掛けたくなかったから、両親にわざわざ言うほどのことでもないと思ってた」

だって「私」が大切なのは、「学校」じゃなくて、「両親」だったから。






『…このえ』

そして「その人」が涙を湛えて私を見たのは、「前日」の話だった。



『このえ、ごめんね』

それを聞いて、両親が「学校での不和」を知ったことを悟る。

あぁ、バレちゃったんだ、って。


「ほんとに、その程度の気持ちだったの」



―――けれど母は、父は、そうじゃなかった。



『気付いてあげられんくて、ごめんね…』

はらはらと流れる涙に、なんだか申し訳なくなった。

泣かなくていいのに。

そんな優しい涙、流さなくていいのに。







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