臆病なサイモン









ダチンコに、センセー。

妹に、母親。

そしてオヤジ。


(…で、ダンゴ)


ダンゴの壁は誰よりも厚そうだから、きっと大変なんだろうけど。

だけど頑張れば、ちょっとずつ歩み寄ることができることを、俺はダンゴに教えてもらったから。


うまくいかない世の中を、ちょっとだけ優しくしてくれたのは、ダンゴだから。





「サイモン」


やがて、ダンゴが動いた。

いつもの真摯な顔で、無表情ぽくポーズきめながら。

細い目を、アンジーのように器用にくい、と引き上げて―――。




「…一生、ダチンコでいいんだ?」


にやり。


ニヒルに笑いながら爆弾を投下したダンゴが、その瞬間、背景の青空に、溶けた。



…青春て、いいな。


なぜかこんなシーンで、人生初めて、そう感じた。




サイモン、十五の夏。
















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