臆病なサイモン






「……ごめんなさい」

俺は好奇心のまま、自己満足の謝罪だけしてダンゴの腕の中からカバンを引っこ抜いてみた。

ガクンッ。

支えを失った上半身がコントみたいに痙攣して、ダンゴの目がバチッと見開く。

あ、一応こんだけ目が開くんだ。

普段の無表情ぶりからは想像も出来ない、びっくり仰天表情筋。


「なにすんの……」

すげぇ不機嫌そう。
眉間にくっきり皺が寄って、口角も下がりっぱなし。

でも俺は怯まなかった。

このパツキンとは関係ないところで、なにかを得ようとしてる気分だった
なぜか、ダンゴは面白いことを言ってくれるに違いない、と確信していた。

サイテーなエゴだよな。
そんで痛い目みるなんてどんだけ馬鹿、ってハナシ。

でも俺のこのパツキンは、今この時だけは関係ないから。



「……あのさ」

こちらを一睨みしてきたダンゴに、俺は深呼吸してから口を開く。
どうかスペシャルアンサーを聞けることを祈って、かつてない勇気を振り絞れるように。







『お前って、実はクールだよね』

とか。

『あ、ちゃんと友達だと思っててくれたんだ……』


とか。

たまに居るんだ、鋭いヤツがさ。

俺の愛想笑いや無理矢理合わせたようなテンションに気付いて、オブラートに包むことなくズバッとぶった斬るようなヤツが。

それ言われた瞬間、俺はもうドン底にワープする。てか落とされる。
落下速度プラス重力で音速超えるスピードで地獄行き。

つまりわかりやすくいうと、その時点で相手が怖くて怖くて仕方なくなるわけ。
だからそういうヤツとは、なんかもう、色々とムリ!ってなっちゃうわけで、そこから友好的な関係は築けない。

なにせ俺がビビっちゃってるわけだから。




『サイモンて実はさ、』

そう見抜かれた瞬間にバイバーイ。

一方的に、俺がバリケード張る。
だって穴やヒビを見抜かれたら、あとどうやって取り繕っていいか、わかんねぇもん。
だからそういうヤツにはなるべく近付かないし、ふたりきりにもならない。

……ようにする。怖いから。

なぁこれってやっぱ、「ズル」、かな?






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