Lの境界線

すぐ近所にあるショウの家まで彼を送ると、俺もすぐに家に帰りついた。

試験明けの日曜、少し遠くの場所にある彼女の墓へと、二人で行くことになった。
話を聞くに、彼女の墓のある場所は随分田舎らしく、空気の綺麗ないいところだそうだ。

「……今更、だよなぁ」

ポツリ、と呟く。
妙に閑散とした自室に、その呟きはどことなく悲しげに響いた気がした。

どんな顔をして彼女の墓の前に立てばいいのだろうか、否、どんな顔で立っているのだろうか。きっと、俺は自分の表情を作れない。
今でさえ、きっと微妙な表情をしている。

どんな顔で立つにしても、結局は今更の話なのだが。

だってそうだ、もう二年も経っている。彼女の死を受け入れきれなかったヘタレ男が、今更何の用だ、と思われるかもしれない。
……いや、きっと彼女なら。

「……思うわけないか」

もう、居ないのだから。

ため息を大きくついて、全身の力を抜いた。
本能に任せて、俺はベッドにうつ伏せる。肌に当たる羽毛が心地よかった。
押し寄せる疲れから逃げるように目を閉じる。真っ暗な瞼の裏には、やはり何も見えない。

頭を使うと疲れるな、と、ぼんやり思う。
今日はよく考えた一日だった。さて、少しだけ眠ろう。
年寄りくさい、と笑われそうだな。でも、いい。馬鹿にされてもいいから、もう一度笑って欲しかった。

……ああ、俺はまた彼女を重ねている。

自嘲気味な思考が巡る。その中で、俺の意識は白に飲まれていった。
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