魑魅魍魎の菊


(き、菊花様…。顔が真っ赤…)


蛇の子もドキマギさせながら事の状況を見守っていた。



「一曲、聞いてくれないか?」

「ききき、聴きます!地の果てまでも!」

「いや、ここで良いだろ」


そんなこんなで登場しなたのは、横笛。大事にされているのか、手入れされているのかとても優美だ。



風がそよそよと流れ、庭の柳が艶かしく揺れる。


皆を照らす月に雲がかかった瞬間、透き通った笛の音が響いた。



その曲は誰もが知っている「朧月」。


頭の中で流れる歌詞と情景、この家の者は皆美しい——



大きな絆で結ばれ、見えない力が大きく働いて未来すら変えてしまう。



(大切なものは目に見えない、)




菜の花畠に、入日薄れ
見わたす山の端(は)、霞ふかし
春風そよふく、空を見れば
夕月かかりて、にほひ淡し

里わの火影(ほかげ)も、森の色も
田中の小路をたどる人も
蛙(かはづ)のなくねも、かねの音も
さながら霞める朧月夜





一息ついたスザクは小さく拍手をする菊花を見つめた。前よりかは何故か敵意を抱かなかったのだ。


——理由を無理には聞かないが、この女も好き好んで血塗れたことをしているわけじゃない。




「琵琶かなんかもありますと格好良いですよね」

「正影が出来るぞ?アイツは幼少の頃から武道や作法や琴や琵琶かなんかを習っていたからな」


お、



お坊ちゃま来た———!!!


 
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