魑魅魍魎の菊
01.それらの宿命

現代の陰陽師事情




正直言って、陰陽師の仕事が格好良いのは「目に見えないもの」を滅した時だけだと俺は思う。


それ以外にも魅力はきっとあるであろう、だがそれは——マニアックな人間にしか解らない。


その要因として、野村万斎が出演した映画《陰陽師》に今日日の小説、漫画、ライトノベルでも然り。

現代社会を生き抜く人間が色々と脚色をしているからだと思うのだ。普通に俺だって小説や漫画を読む、面白いと思うし実際にファンにもなる。






「もう高畑先生大好き、最強最高!もう今世紀最大の喜びをありがとう神様ァァ——!!」

「…由衣煩い。この前高畑のこと禿げろ、違う学校に飛ばされろつったのは誰だ」



隣の席で喜びを体全体で表現している幼なじみは「松野 由衣」。
歓喜のあまり涙しそうな勢いだから恐ろしい。



「何処の誰よ?!信じらんない!」

「おめーだよ」

「だって正ちゃん!!今回から古典の授業は宇治拾遺物語《安倍晴明》をやるのよ!興奮しない人間居たらあたしに教えて欲しいくらいよ!」

「由衣以外の人間だっつうの。俺は興奮しねぇ」

「何を言っているの?あたしはこの授業の為に予習、三時間したの!」



あまりの気迫に一瞬だけ怯んだ俺は顔を引き攣らせながら、学ランを脱いだ。

現在は昼休みのせいか体温が上昇している。…お陰で眠気が半端無い。



 
< 2 / 401 >

この作品をシェア

pagetop