魑魅魍魎の菊


恐怖を覚えるまだ平気な生徒は泣き叫びながら倒れた生徒の体を揺する。





「…お、オイッ…玖珂。あれ…やりすぎじゃ、」

「……さすがにマズいな」



二人で顔を見合わせた瞬間。





「キャアァァァ〜〜。熱中症だわ〜!だ〜れ〜か〜、先生をよんで〜!ほら〜そこの突っ立ってる子も、先生をよんで〜熱中症よ〜誰か〜来て〜」




((何なんだあの大根役者!!))

二人はあまりにもド下手な演技に口をポカンと開け、さり気なく倒れている生徒に蹴りとヘッドロック、エルボーを繰り出す菊花に冷や汗をかいた。


そして…男子女子関係無くやっているあたり、えげつない…。




「……井上、あの女の悪行三昧をスルーしてくれ」

龍星は目元を押さえながら呟き、

「……つーか、忘れろ。悪夢だ悪夢…」

正影は溜め息を吐きながら、菊花を見つめる。




「あっれ〜〜。綺麗なブレスレットゲットだぜ〜!」




そうわざと叫び、菊花はスキップをしながらこちらにやって来て…。

井上穂積にブレスレットを差し出したのだ。さっきの悪者の笑みではなく、嬉しそうに笑っていた。




「……せ、先輩…」

「いーよいーよ何にも言うな!私は自分の"悪"を貫いただけ!」

「バカヤロー。ここは嘘でも良いから"正義"とか言っておけ」


正影は菊花にチョップを入れ、龍星も小さく笑うのだ。





穂積は腕にブレスレットを装着した瞬間、窓から流れ出す太陽の光の"影"に何やら不可解な残像を見たのだ。


 
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