魑魅魍魎の菊

丑三つ時の百鬼夜行






「若殿、どこに行っていっていたんですか?!鏡子を待たすとか、有り得ないんですけど!」

「……ハイハイ、少し寄り道してましたー」

「誠意が込められてない!」

「白ちゃんったら、私なら大丈夫だよ?若も何か事情があったんだよ、ねっ?」



俺にキャンキャン吠えていたのは、妖狐でも白狐に属する「白」。

擬人化していないのか、小さな狐サイズで鏡子に抱えられている。そしてコイツはコイツで鏡子のことを気に入っていて、鏡子中心に世界が回っていると言っても過言ではない。



「つーか、完璧に玖珂家の風紀が乱れている…」

「まあまあ、若。それよりどちらに?」


鏡子は水色の着物を着ており、緊張のせいか少しだけ顔が強張っている。
百鬼夜行の頭を捕らえるためには、鏡子の力が必要なのだ。



「ちょっと学校に掘り出し物があったから、寄っていただけだ」


「フンッ——。どうだかね」




カチンッ。




「白よぉ、良いんだぜ?テメェの祠壊しても」


「!!??」

「若ァァ——!!そうやって乱暴なことを仰らないで下さい!し、白ちゃん?大丈夫だよ?若が乱暴なだけですから」



そう。妖狐には様々な種類が存在し、説明するのには少々時間がいるので白のような「白狐」だけを説明する。


奴らは白い毛色を持ち、人々に幸福をもたらすとされるのだ。
稲荷神社に祀られている狐もほとんどが白狐である。町内にある神社に祀られているのが「白」である。



「俺が直々に手を下さいてやっても良いが?」

「くっ——!」



悔しそうな顔をしている白にニヤリと笑いながら、俺は我が家に集う大勢の妖怪、物の怪、付喪神の前に行くのだ。



因みに余談だが、安倍晴明の母親とされている狐も白狐らしい。

由衣に吹き込まれたわけじゃなく、親父から聞いた情報だけどな。




——さぁ、我が玖珂家の力を見せつけようじゃないか。




 
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