魑魅魍魎の菊






さんざめく…竹林の中で左腕から血を流し、爬虫類特有の黄色い瞳をした菊花は何メートルにも伸びた黒髪で「大槻」を縛り上げた。

だが、仮面をしているためその表情は誰にも解らない。

口角も歪んだように上げられて、今にも舌が裂けそうな勢い。とその瞬間、蛇のように蠢く髪が大槻の蝶のような仮面を剥いだのだ。




「——へぇ、ちゃんと"青い瞳"を受け継いでいたんだ」




「——っ!!??」


菊花の口からはとんでもない言葉が飛び出した。こんなことは本人と長年の付き合いである蓬莱にしか解らないことである。


「…空の色にしては濃すぎる、海の色にしては薄すぎる。神秘的で摩訶不思議な美しさですね…」


その声に一瞬でも憂いを見つけてしまった"大槻"はどうしたら良いのか。


「……貴様、何処まで知っているんだ」

「何処まで?さぁ、何処からでしょうね」


「いつまでしらばっくれているんだ!貴様等が私を狙う理由は解っている!——こんな大事にして、滅するならさっさと滅しろ!」






大槻——いや、瑠璃丸は前大槻に生かされたのだ。彼女の命の源といわれる宝玉を心臓に埋め込まれて、彼女の変わりとなって生きている。

彼女の象徴ともいえる青い瞳を引き継いで何百年も生きている…何百年も、何回季節が巡ったことやら。



「……だから、言ったじゃん」


菊花は右手で大槻の頬に触れて——








「簡単に滅したら、面白くないって」



その手は大槻の白い肌に吸い付くように…そのまま首を撫で、一気に着物を開けさせた!

 
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