魑魅魍魎の菊
07.夏色妖怪奇談!!

呼ばれて飛び出て!




(——クソッ、)



萩原龍星は拳から血を流しながら、夜の街を歩いていた。ネオン光るこの街でどうしたら良いのかわからない。


変わらなくなってきた毎日、色を失った世界で何を糧にすれば良いのか。


隠しきれない動揺がまだ頭から離れない。これが運命というのならば、俺は全力でこの世界を壊してやろうかと思う。


だが、やり場の無い怒りが矛先を失いかけていた。




「っ——美鈴…」




鈴の音が恋しいのだ。
あの艶やかな髪とあの眩しい笑顔…


あれから一週間経った。現状は何も変わらない。



「……ははっ、馬鹿だろ俺…」


龍星は美鈴が消えた日から荒れてしまったのだ。町中の不良という不良をぶっ潰し、とあるグループをたった一人で壊滅したという。



自嘲の笑みしか浮かんで来ない。もう街の雑音しか耳に聞こえて来ない、この腕で美鈴を抱きしめたい……。



(早く、これが悪い夢なら覚めてくれ)


早く終わって欲しいと願うばかり。だが何処からが最初なのだ?

闇が続いて、ただ美鈴の蛇の姿が頭にこびり付く。


夜の街は冷たくて、ただひたすら温もりを求めるのだ。俺は一体どうしたら良いのだ…。



だれか教えてくれと乞うばかりの俺はさぞかし滑稽だろうが、俺の中で何か大事な物が音を立てて崩れて行きそうなんだよ。



(ただお前にもう一度だけ会いたいんだ……)


 
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