魑魅魍魎の菊



——冗談抜きで今のは驚いた。


私はまた抜刀して、軽く構えるのだ。ここはどうやら"幻術"で創られた世界。厄介なことに——





「陰陽師が後ろ盾しているなんて、面白くない」

「面白さなど俺達は求めていない。だが、陰陽師の作り出している幻術と解った時点で凄いな」

「スザクさんに褒められたのは、ガチで嬉しいけど——」




この鬼、この世界を完璧に熟知した上で自分の能力も使いこなしている。
私は左腕の痛みを堪えながら次の攻撃を待つ。ここで無闇に動いては奴らの術中にまた嵌まるだけだ。

「…かなりの手練と見た。だが、ここが貴様の墓場だ!!!!」




来ル。





その瞬間、背後から何かの突きが来たので私は跳躍すれば——





登場したモノに軽く驚いて、刀を落としそうになったのだ。











「び、毘沙門天!!??」


「ガーハッハッハ!!小娘、やるのう!!」



私、修学旅行で見たことあるよ?!ていうか、どうしてこんな所に四天王の毘沙門天がいらっしゃるの…




「焦っているようだな」

ククッと笑うスザクさんに苛立を覚えながら、この状況をどう打破するのか考えねばならない。

だ、大体…



「どうして四天王の毘沙門天がこんな所にいらっしゃるんですか!」

「おぉ、スザクとは飲み仲間でのう。暇じゃったんで、遊びに来たんじゃよ」



軽っ!フットワークが軽すぎる!

軽い目眩を覚えながらも、現在の妖怪や神の世界の風紀が完璧に乱れていることに今更ながら気付く。


 
< 37 / 401 >

この作品をシェア

pagetop