魑魅魍魎の菊



加藤の目論み通り美鈴は生きていた。

ただ……生かされている、といっても過言ではない。



(……リュウセイ、会いたい)



美鈴の瞳は黒に戻っており、その無機質な瞳に"琅燕"の姿を映す。


「美鈴?我の質問に答えろ」

「……いえ、菊花様のことを考えていました」

美鈴がそう答えれば、琅燕は満足そうににんまり笑った。正影様とも穂積様ともリュウセイとも違う正反対の笑い方。まるで光なんて知らないみたいな笑い方をする。

だが、弱い妖怪の美鈴がそんな出しゃばったことなんて言えない。まるで少し前の"全て"に怯えていた美鈴みたいだなんて……



「……菊花、か。アイツはよく働いてくれる」

琅燕様はまたもや美鈴の髪を撫で、接吻を額に落とした。美鈴は知っている。琅燕様は美鈴を菊花様の代わりとして見ている。

そんなことはどうでも良いのです。



(あぁ、美鈴。お前はなんて愚かな物の怪なの)



早くリュウセイの所に帰りたいだなんて……。




「琅燕様……どうしてそんな菊花様にこだわりを持つのですか」


これかは子供の純粋さ故の薄暗さなのか。それとも光を知った故の暗さなのか。
そんなのは美鈴には解らない。解らないことだらけ。

琅燕はまた笑みを浮かべ、美鈴を抱えなおした。


「美鈴は良い子だから教えてあげよう。菊花は特別なんだよ?あの憎き玖珂家の……










物の怪だったんだからな」



ケタケタケタケタ……



(一体誰の涙が流れたのでしょうか)


「……あいつに"記憶"があればの話だな。美鈴は良い子だから、わかるよね?」


 
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