魑魅魍魎の菊

翡翠が見たもの



儂の目の前に立ち並ぶのは——



例の百鬼夜行の集団だ。頭を突如失った百鬼夜行は戸惑い、軽く狼狽えていた。

そんなことより…見た事もにあ妖怪が多々居るではないか。



「千影……。あの物達、」

「神影、言いたいことは解る。……見た事もねぇ面だ」




今回、正影が練った作戦は——

《鳳》で放った結界の何処かにスザクと正影の幻術で「亜空間」を作り上げるのだ。
その中に"頭"だけを誘き出して、百鬼夜行と切り離して——後に正影が創った幻術世界に連れ込む。勝算はある、らしいが——実際の頭がどの妖怪か解らない限り、どちらにも転がる。




「——成る程、"菊花"を切り離したのじゃな」


聞き覚えのあるしゃがれた声に目を見張った。


「何故ここに居るのだ蛇骨婆。——お前、蛇塚はどうした」

「久しぶりですな千影様。わしは出張でここに参加しているのじゃ」


蛇五右衛門を愛し、今でも変わらず蛇塚を守り続けていた老婆がどうして——このような百鬼夜行に参加しているのだ。

"頭"の狂気にも似た強大な《妖気》は儂が今まで出会った神のどれにも該当しなかった。



「——落ちぶれたものじゃな、蛇骨婆」

「口を慎め、神影。……我らの頭は何処におるのじゃ」



蛇骨婆の蛇も唸り、それと同時に他の妖怪達も唸るのだ。そして、儂も自分の妖気を増幅させれば下っ端の妖怪ならすぐに泡を吹く。


 
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