鴉《短》


「…考えておきます」

捻くれた呟きを押し込めて、そうぼそりと返して、私は席を立った。
またいつでも相談に来なさいという先生に、貼り付けた笑顔を向け頭を下げる。


窓ガラスを突き抜け、全てを己の色に染める夕陽。

橙に染められた廊下を、教室に向かって歩いた。

甘ったるい夢や希望で塗りたくった未来。

私はそれを聞きたくて、彼らの元に行っているのではない。

……家にいる時間を、少しでも減らすためだ。



図書館は5時に閉まってしまうし、誰も居ない教室は、とてつもなく孤独を感じる。

こんな時期となると、友達を遊びに誘うのも気が引けてしまう。



……私は、独りが、嫌いだった。


だから、7時まで空いており、一対一で個人相談をしてくれる進路室しか、私が時間を潰せる場所は無かったのだ。

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