燕と石と、山の鳥
この偏屈爺は文句を垂れてるのが平静だ。
そして図書館を自分で経営しているだけあってというかなんというか、おそろしく頭が回るらしい。

らしい、と言うのは口が悪すぎてたまに伝わらないからだったりするのだが。



金星は俺を改めてまじまじと睨み付けると、ゆっくりとその歯を剥き出した。


「あぁ…、テメェおい小僧。例の変なダチ公だなぁそりゃぁよぉ」

「あ?なんだよ」

「はぁん。なるほどなぁ」


これは明言する気のないパターンだと見切りを付けた。


「それよりよ。禅宗の悟りってのはどんなんなんだ?」

「あぁん?なぁんだよいきなり馬鹿な事ぉ聞くじゃあねぇか」

「知らねぇのに急ぎで知らなきゃならねぇ事情が出来ちまったんだから仕方ねぇだろ」

「へっ!そんなもんがここでちょちょいと言えるようなら古からの坊主共の努力は必要ねぇってもんよ」



耳を傾けながら近くの本棚に腕を組みながら背を預ける。
金星は首を回してゴキゴキと慣らしながら続ける。


「悟りを完全に言葉で説明するのはなぁ、不可能なんだよ。悟りってなぁ言葉とは反対にもある」

「もってこたぁ言葉の中にもあんのか?」

「無理矢理言い方をはめんなら悟りってなぁ世の中のあらゆる事をわかった気になるってぇこった」

「わかった気?」

「言葉で完全には言い表せねぇ感覚だからなぁ、そんなとこなんだよ。まぁ大悟小悟と細けぇ事をのたまった所で今のてめぇがわかるとは思うめぇよ。とりあえずな、坊主共は大層悟るとえれぇ坊主ん所に報告に行く。んで問答すんだよ」

「問答」

「そーぉだ。犬に仏性はあるかとかな、問いは色々だ。それをいかに淀みなく答えられるかで更に悟りを見出すってなぁところだな」

「仏性ってな確か仏教を解する質の事だったか」

「ちったぁマシなおつむになりやがったなぁそぉだよ。ないと答えてもあると答えても何故かと聞かれる。それは畜生だからないのだでも生命があるのだからあるのだと答えたって良いんだよ。後から同じ質問に違う答えを返したって関係はねぇ」

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