第七世界
浮浪者は救急車で運ばれていった。

両腕を無くしては、治療を受けなければ死ぬ事になるだろう。

しかし、何で腕を切ったのかなど、いろいろといざこざが起きそうだ。

いや、多分、ティーナさんに力を貸してもらったのかもしれない。

「いつつ」

俺は救急車で運ばれる事はなく、その場に残った。

楓が拒否をしたようだ。

「ちょっと、何で、俺は乗って言っちゃ駄目なんだよ?」

「君はこの子を送る役目があるからだ」

指差したのは呆けている香坂であった。

さすがに、今までの事を理解しろというのは難しいだろう。

「というか、俺も結構、やばくないですか?背中斬られてるんだけどよ?」

「君はタフネスだからな、問題ない」

俺も人間なんだがな。

「おい、香坂、帰るぞ」

さっさと帰って、治療したいところである。

「え、うん」

しおらしくなってしまっている。

自分の思いがけない事がおきれば、毒気も抜けるってものか。

香坂は普通の人間で、普通の人生を送っているのだからな。

俺だって普通の生活を送りたいだけなんだけどよ。

周囲におかしなことが起こるせいか、巻き込まれるというか、自分から行ってしまうというか。

「おい、立てるか」

「もう、大丈夫」

腕をもって立ち上がらせる。
< 203 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop