第七世界

帰郷

夜の帳が下りる。

布団の中で横になっている刹那はまだ目を覚ます様子はない。

「体が弱いのに無茶しやがってよ」

刹那の隣で俺は様子を見ていた。

腕はくっついたし、頭の割れた部分は応急手当で治るらしい。

以前、頭が割れたときは手術すらしたというのにも関わらず、今は応急手当だけで治るとは、不思議な話だ。

「本当に、そうですね」

牙狼との戦闘中に消えていた梓さんが部屋の入り口に立っている。

「なあ、どこにいっていたんだよ?」

「様子を見ていただけですよ」

感情を感じられない声で静かに言う。

「は?」

「あなた自身が見合いを破壊するようにしたのでしょう?私は見合いを組んだ側の者。あなたに助太刀する義理はありません」

「じゃあ、仮面との男の戦いに助けたのは」

「ただ単に、見合いの前日にいざこざを起こして全てが水の泡になるのを防いだだけです」

自分の一族と牙狼の一族を結びつけることにおいては積極的すぎるほどだ。

「今回はあなたが鷹威の血を目覚めさせたから助かっただけですわ。私はあなたに死んで欲しかったんですけどね」

見合いが失敗に終わり、怒りさえ覚えているようだ。

「最初の客人の扱いはどこへやらだな」

「明日にはここを立ってもらいます」

「刹那がまだ目覚めていねえのにか?」

「私には関係のない事です」

背中を向けて立ち去っていく。

俺は梓さんのせいには出来なかった。

本来なら梓さんにも罰せられるところだったからな。
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