第七世界

夢と現実

深夜三時。

周囲には何もない芝生が広がる公園にて、一人の男が座禅を組んでいる。

緑の帽子を深く被り、緑の学ランに赤いシャツ。

手元には一振りの刀。

瞑想しながら、精神集中を行っている。

氏名は乾光蔵。

学園四天王最強で三年。

実家から徒歩で学校に登校している。

乾家の歴史の始まりは遠い昔、乾の力を受け継ぐ者以外は知らない。

乾一族は退魔を用いて、魔から人を救う力があった。

それを職とする者もいたほどだ。

いくつもの歴史を重ね、技術は高まり強くなった。

乾光蔵は本家の人間であり、一族の中でも強さが違っている。

幼少の頃より厳しい修行の中で育ち、人を、魔を、殺める技術を身につけた。

乾光蔵の場合は正しい教育は行き渡り、自身の意思が何よりも固いために、刀を濫りに扱う事はない。

乾の名に恥じぬ男である。

正しい人生を与えてくれた、一族の人間達に感謝をしていた。

「乾光蔵様ですね」

闇の奥から声がする。

男の声だ。

「吸血鬼か」

乾は気配だけで人ではない事を察した。

「玄魔と申します」

闇から姿を出した黒いスーツの男は静かに名乗る。

吸血鬼である玄魔であったが、人間である乾光蔵に出会った瞬間、敵わぬと悟った。

そこには悔しさは微塵もない。

「俺に何用だ?」

乾は瞑想を続けたまま要件を聞いた。
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