第七世界

鉄拳

俺は刹那の背中を追うように、家路についている。

「刹那、待てよ!」

「知らんわ」

怒ってはいるが、クマの人形は大切に抱えているようだ。

「意地を張っても疲れるだけだぞ!」

やはり、移動の速さからすれば俺が上のようだ。

すぐに隣について、刹那の腕を掴む。

「お前さ、本当は可愛いんだぞ」

「どうせ、子供のような可愛さとか言うんやろ?」

今日はやりすぎたのか?

俺自身、わざと言っているわけじゃない。

口が勝手に喋るんだからしょうがないよね。

「リードなんか微塵もせんと、疲れさしただけやんか!何言っても、今日は取り返されへんねん!」

辺りは暗くなっていてた。

刹那にとっては、楽しい休日も台無しになったんだろうな。

二人がやり取りをしている最中、向こうから大きな体躯を持った影が走ってくる。

どこかの他人だろうと、横を通り過ぎようとした時だった。

影から肘が伸びて腹を射抜く。

「ごは」

後方にぶっ飛び、地面を転がる。

「ぐうぁ」

内臓をやられたらしく、吐血する。

「恭耶!恭耶!」

刹那がこちらへとかけてくる中、意識が遠のく。

完全に意識が落ちる前、刹那の後ろに奇妙な文様が描かれた仮面の男を見た。
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