第七世界
俺は考える。

生徒の群れが在るという事は、授業を始めたい先生が生徒を教室へ戻そうとする。

楓も教室には行かずに来るはず。

流れでHRは遅れ、助かって死なずに済む。

教室にダッシュ!しようとしたが、足は別方向に走っている。

群れへと突っ込んでいるぞ。

何か気になるしな。

好奇心旺盛な自分には困ったものだ。

近くで見るためにざわめく群れの中に入る。

群れの真ん中では、傷だらけの男が二人立っていた。

よく見ると、一人だけが傷だらけって感じだ。

一人は余裕な感じで、笑っているように見える。

何がなんだかわからなかったので横の子に聞いてみる。

「すまんが、どうなってんだ?」

「なんかね、肩にぶつかったとかどうとかで喧嘩にって、鷹威君!」

声には聞き覚えがあった。

それもそのはず、横にはポニーテール少女の佳那美がいるのだ。

「佳那美も見てたのか」

「気になって」

「浅はかな理由だな」

「別にいいじゃない!気になったの!」

自棄ないい方だ。

「俺もそんな感じだ」

「なーんだ、鷹威君もそんな理由なんじゃん」

「それより、誰か止めないのか?やられてる奴、結構ピンチだろ?」

このままいけば、死ぬかもしれない。

「止めに入れたなら入ってるよ」

「どういうことだ?」

「笑ってる人ね、かなり強い人なんだ。名前は海江田広隆だったかな。皐月鳴の四天王って言われてるみたい」

「強いからって一方的にしばいていい理由にならない。誰かが止めなきゃ殴られたままになっちまう」

足は前へと出ている。

「やめなよ、鷹威君があんな風になっちゃうよ!」

佳那美の制止を聞かずに、身体が二人へと近づいていく。

「構わねえ!男として、助けなかったっていう悔いは残したくねえ!」

何だかわからないが怒っていた。

感情が高ぶりすぎたのだろう。

俺は二人が気付く距離まで出ていた。
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