愛しいキミへ




何、考えてんだろ。
別にこの人に好きな人がいようといまいと関係ないよね?

そりゃ、顔はタイプだって事は否定できないけど。

分かってる。
分かってんだけど。


頭が勝手にこの人の事知りたいって言ってる。


分かってるのに。
あたしと彼はただの客と店員。

何のかかわりもない他人だってこと。


「なぁ、こんなのどう?」


そう言って振り返った彼の動きが止まった。

「お前…何で泣いてんの?」


あたしは泣いてた。

自分で考えたくせに、他人だってこと。
分かってたはずなのに。
いざそれを目の前にするとすぐに崩れちゃう。

もう、あたしはとっくに好きになってたんだ。

最初は外見だけだったかもしれない。
一目ぼれってやつ。

でも、気付いちゃったんだから。

意地悪なのにすっごく優しいって事。
ひまわり、ほんとは2000円だったんだよね?
だってタグに書いてあったもん。

今日だって馬鹿にしたくせにちゃんと言った通りに探してくれてる。

ずるいよ、お客のあたしに優しくするなんて当たり前なのに。

勘違いしちゃうじゃん。



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