セツナイ恋愛短編集―涙と絆創膏―
私の住む街は
海が近い


「いってきまーす!」


私は今日も
引っ掴むように自転車に乗りこむ


「気をつけるのよ!」

うしろで
お母さんが叫んでる


さっき食べた
パンを動力にして
ぐんぐんペダルをこぐ


…これがなくちゃ
一日がはじまらない


海沿いの下り坂を
足をひろげて
一気に
駆け抜ける



車輪の回転する音
潮風の匂い


朝日にまじって
風の中に
キラキラ光る粒が
見える気がする



この瞬間がたまらなく
好きだ


「おーい!」


坂を降りる頃
自然に合流するのは



ハル
幼馴染みの
…親友


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