嘘吐き


「忘れ物ない?」


「大丈夫だって。
それ聞くの何回目だよ」


そういって笑った。


「だって…忘れ物されても困るんだもん」


彼を思い出したら悲しくなるんだもん。


「じゃあ…そろそろ行くね」


「駅まで送ってく!」


「いいよ、名残惜しくなっちゃうから」


名残惜しい…
そんなことを言われたのは初めてだ。


「里奈…」


いきなり腕をひっぱられて、抱き締められた。


「本当にありがと。
俺…」


「ん?」


「こんなに誰かにやさしくされたの初めてで…すごい嬉しかった」


胸が高鳴る。
彼にも伝わってしまっているのだろうか。


「私も…こんなに素直になれたのって初めて」


抱き締める腕の力をつよくされる。


「絶対帰ってくるから」


「うん…待ってる」



最後に軽いキスをすると、何も言わず彼は出ていってしまった。
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