百物語骨董店
角にある 駄菓子屋のおばちゃんに聞いてみる

「おばちゃん、あんなところにお店あった?」

10円のチョコレートを買う

「なに言ってんだい?ずっとあそこにあるじゃないか」

おまけね、とソースせんべいを透明の菓子ポットからひとつ取ってくれた

ずっとある?

まだあまりこの街に慣れてないからかな?

タケルはその不思議な店のショーウィンドウに近付いて
中をのぞいてみた

古ぼけたテーブル

古ぼけた陶器のオルゴール

古ぼけたワンピース

古ぼけたフランス人形

―小さな黒い猫の置物―

なぜか
目がとまってしまった


手のひらにのるくらいだろうか

黒い猫の置物


タケルはそれに
引きつけられるように
重厚な木製の扉に手をかけた

意外にスッと扉は開いた

店の中は外とは違う世界が広がっていた

オレンジ色の灯に照らされた、古ぼけた物、物

ところせましと物がおかれている

綺麗な女の人が着ていそうなグレーのワンピース
目がキラキラと光るフランス人形

そして、黒い猫

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