Mafia〜兄妹を越えた真実(ホント)の約束〜
「麻里が死んだらアイツが報われんだろ…」
「アイツ……?」
お兄ちゃんは、しばらく口を開こうとはせず、ただ黙って空を見つめていた。
「アイツだよ…。剛」
久しぶりに聞いた名前。
あたしが殺した恋人…。
どうして剛が…?
あたしは首を傾げた。
「俺は麻里を傷付けたアイツを絶対許さねぇ…。死んだ今でもな」
「やっぱり…あたし殺しちゃったんだ」
「でもな、最期は麻里を庇(カバ)ったんだ。あの日病院に運んでから二、三日は意識があった。そして事件だと疑うデカらにシャブ使って訳分からないうちに自分で発砲して止めに入った麻里が誤って自分を刺したと証言した」
「剛が……」
最後見た血だらけの剛の姿が脳裏に浮かんだ。
「それでも俺は許せなくて機械でかろうじて生きているアイツの息の根を止めてやろうと夜中にアイツの病室に行ったんだ」