君に贈る詩*

放課後

「絢菜はさ、好きな奴とかいんの?」


「んー?」


「だから、好きな人。」


「…いる、かもね。」


ふたり以外、誰もいない教室でのこんな会話。


少女漫画ならこの後相手の男の子が自分に告白してくれたり、するんじゃないかな。



でも、現実はそんな甘いもんじゃないことくらい、今まで生きてきた17年間で嫌ってほど思い知らされてきた。



「和也こそ、彼女はいいの?」






答えはわかってる。




「今部活中ー。待ってんの。」



ほらね、やっぱり。


知ってるよ。


あなたがこうやっていつも待ってること。




「それより、俺はお前のが知りたいの!」


机をどんどんと叩いて拗ねたように言う和也。



「さあね。」



「なんだよそれっ。」



「好きだけど、絶対に届かない人。

じゃあ、あたし帰るね?」

あたしは貼り付けた笑顔とともに立ち上がる。


絶対、言わない。



誰にも言わない。



心の奥に閉まっておくよ。




だからお願い。




もう少しだけ、好きでいさせてください。




放課後

(あなたは今日も彼女と手を繋いで仲良く歩くんだね。)
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