しなやかな腕の祈り
裕子さんは優しい笑顔でそう言った。


「あたし、多嘉穂って言います。
大屋多嘉穂です。ありがとうございます」


深々と頭を下げた。





物語は急展開を迎えた…
そんな一節があたしの頭の中をよぎっていった。
スパニッシュギターの音色と、踊り狂うたくさんの人々のハレオの中を通り抜け
あたしは走りだした。
母に会いに行こう。母に会って、聞きたい事も話したかった事も
全部スッキリさせよう。マドリードまでの道のりは果てしない。
だけど、あたしはバイラオーラ。
プロダンサー.大屋千秋の一人娘。
この情熱の大陸は、バイラオーラ全てのメッカなんだ。
あたしは今メッカにいる。
フラメンコの神様が、母の所へ導いてくれると信じよう。







漠然とした不安と期待を胸に秘めて、あたしはマドリードへ向かった。
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