しなやかな腕の祈り
『ゴメンね』って台詞を、繰り返し呟いていた。




「お母さんによろしくね。秀一と静香にも」



散々泣いた後、お母さんは離れた家族への言葉をあたしに託した。



「電話する。」

「そうして」



ギリギリの時間だって事に気が付いて、あたしは手を振った。

お母さんの姿が少しずつ小さくなって、あたしは振り返らなくなった。

搭乗してから、また泣いた。

安心したのもある。

嬉しかったのもある。

色んな感情が入ってきて、胸がいっぱいになった。






日本に帰ったら、おばあちゃんと秀一おじさんたちにお母さんのことを話そう。

今までの事を聞いたことも。







あと…お父さんを探そうと思った。




最終決着を付けようと思った。





そんな事を考えていたら、あたしは眠り込んでいた。
< 60 / 137 >

この作品をシェア

pagetop