しなやかな腕の祈り
「多嘉穂」



お茶を汲みにキッチンにいたあたしを呼ぶ叔父さんの声がした。

返事をしてリビングへ戻ると、真剣な面持ちで大人陣が待っていた。



「座りなさい」



おばあちゃんの泣きそうな顔が、今からあたしにする話の内容を既に物語っていた。



「千秋…どうしてた???」



やっぱり、そう。



だけど一番聞いて欲しかった事。

あたしは全部正直に話した。



スペインで一番の劇団の第一舞踏手になって、稼ぎまくって頑張っていること。


本当は皆に会いたくて、毎晩夜中に一人泣いていること。



今まであった事を全部聞いたこと



おばあちゃんも、叔父さんも叔母さんも涙目であたしの話を聞いていた。



「…日本に着いたらな、電話するって言ってある。
ばぁちゃん、叔父さんも叔母さんもお願い…
お母さんに声聞かせたってよ。」



そう訴えると、おばあちゃんと叔母さんは頷いた。

叔父さんは、頷かなかった。

叔父さんの態度に腹が立つ。

何で頷かない??

言ってること分からない??



「叔父さん!!!」



もはや必死だった。

一言でもお母さんと話してほしいのに、頑なにそれを拒否する叔父さんが恨めしい。
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