36.8℃の微熱。
 
お姉サマたちはもうすっかりあたしを妹だと思い込んだみたいで、店への帰りぎわ。

先生に名前を聞いたらしく「ありがとねー、茜ちゃん!」と何人かから背中に声がかかった。

本当はあんまり振り向きたくないけど・・・・でも、名前まで呼ばれて無視するわけにもいかない。

「いいえ〜」なんて言って、とりあえずの笑顔を作った。


「頼むな、茜」

「うん」


あたしは一体、ここまで何をしに来たんだろう・・・・。

このとき初めて先生に呼ばれた名前の響きは、胸の奥をただズキズキさせるだけだった。


店に戻って、ユカ様たちに事情を説明している間も、胸のズキズキはおさまらなかった。

マリアンヌさんもユカ様も、まぁ王子は露骨に嫌な顔をしていたけど、それでもおおむね快く了解してもらって。

先生とあたしのとっさの嘘につき合ってもらえるのは、すごくありがたかったし助かった。

けど。


「ごめんなさい、急に外出たからかな、なんか頭が・・・・。ちょっと休んできていいですか?」


あの人たちとも先生とも、今は顔を合わせたくない。
 

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